胡瓜の真夜中通信

胡瓜と真夜中をこよなく愛するアラサー女史が、日々の色々をまるで闇の微かな煌めきのように、名画の一コマのように切り取り過大解釈して綴ります。どうせ生きるならドラマがなきゃね。更新はたぶん真夜中。たぶん。

カメラを止めるな!

※ネタバレになるので鑑賞予定の方はお控えください


映画、カメラを止めるな!を観てきました。
今通ってるスクールの出身ライター上田慎一郎さんが脚本・監督・編集ということで、
5月の入学から毎週教室に入るたびに気になっていたポスター。
まず、タイトルがどうしても気になる。
そしてポスターのデザインが気になる。
もう一つ、俳優の頼りない顔がとてつもなく気になる。
気になりっぱなしでした。
未だ教室に、友達なんてもってのほか・挨拶を交わす知り合いすらいない私は、一人悶々と気になっていました。

ある日のサマーセミナーで講師が、この映画業界人で知らなかったらモグリです!って言っていて、あぁやはり。とても当たっているのか、観たいな。と。ゆー事で、劇場拡大もした事だし行ってきました!

※以下、映画本編に沿ってわたし個人の動向も記していきますがいよいよ本格的に大幅なネタバレしますので鑑賞予定の方は絶対に!すっ飛ばしてください。


男子三人組と、中年カップルの、ちょーど一席空けて距離取ろうよ、これはグループ鑑賞でよくある事ですね。暗黙のなんとかってやつですが、
その一席にコーラ持ってズカズカと入り込み着席。
事前購入だったからしょうがない、堂々と座り、すぐに本編スタート。
わたしはブリトーを食べ始めます。

冒頭36分ほどのワンカット。
んー、ブリトーとコーラを手になんとも言えなくなる私。
いや、これ、ワンカットでこれすごいけども、
なんだろうかこの様々な違和感は。
画質は荒い、トンチンカンな間、唐突な説明台詞、中盤やたらと変な動きのゾンビ、演者の監督はここでって時にしか出てこないし、必要以上に長い叫び声。などなど。とにかく変。
どうしたもんかーくらいの沸点の違和感がかなり散りばめられてて、あーこんな感じの水準か。
でもやっぱりゾンビだから、嫌な緊張感はあってビックリはするし、クスッと笑いが出て来ちゃうところもあるんですよ。
それは、内容そのものよりも、このゾンビ映画の描かれ方にクスッと笑う。その類です。

それでも、そーっとそーっと、画の中になにかが隠れてる気がして用心しながらそっとブリトー食べます。
時々、唇がヒリヒリしてきて、チリソースいつも抜いてるのに今日は浮ついてたんだ、私抜くの忘れてる、、、あ、でも美味しいな、コーラすすむな、、、ビール飲みたかったけど高かったな、なんてことを思いながら。
両サイド男性陣は飲み物すら買っていないというのに!

ワンカット終わりまして、真髄はここからです。

なるほど撮影隊の物語なのね。
いわゆるバックステージ。
正直、劇場のみんながホッとしたことでしょう。
そうだよね、あのままずっと行くわけないよね。
ケーブルテレビ【ゾンビチャンネル】開局記念ゾンビドラマ、30分ワンカット生放送を成し遂げるべく、
しがない中堅監督が孤軍奮闘しながら、脚本を書き本読みをし、リハを繰り返し本番当日を迎える。
アクシデントから、なぜか監督とその妻も、出演することになります。

分かってるのか分かってないのか分からない局のプロデューサーと、
こだわりが強くわがままで、演技以外ではチャランポランな役者陣、裏で転がりまくって駆けずり回ってる制作スタッフ。
後半の1時間半?はとにかく、ヤバイ現実の連続です。
泣きべそかきながら当日までなんとか仕上げていっても、想定通りには進まないのが現場。
ショーやイベント、生放送の裏側は、
こんな感じで必死に汗水垂らして繋がっているます。
大体の場合がPは、初日乾杯などで、無事に事故なく初日を終えてよかったです!と笑顔満点で言いのけるのです。

どのシーンもとてもリアルで滑稽。
そして最初に感じた数々の違和感は、瞬く間に全て!回収されてゆきます。
小さな仕掛けをたくさん丁寧に散りばめることによって、笑いは次第に大きくなり伝染され、場内は爆笑に包まれます。
それはもう、すごい一体感ですよ。
笑いすぎていた私は、うっかり右隣の男性と足が触れていたことに全く気付きませんでした。
まっっったくです。
体が動いてしょーがないくらいの笑いなんです。
あぁ、書いていてもまた観たくなる。
すげーよ。

ひたむきで丁寧で愛のあるシーンがずーっと続くもんだから、私は腹を抱えて笑ってるのに涙が出てきました。
そうだよ、ものづくりってこんなに素晴らしいんだよ。
クールな顔してたって、みんな火を隠し持ってる。

テレビの向こう側にはなんとか伝わらずに済んだ事故の連発も、とうとう隠しきれなくなり、
最後の最後、物語の核の部分で演出を変えなきゃいけない選択に迫られた時の監督の、

クレーン無し!のあの表情。
思い出すだけでも胸がギュッと痛くなります。

まぁそこで全てを汲んでくれるよく出来た娘のお陰でこと無きを得るんですが。
とにかく素晴らしい!の一言でした。
この感動、この笑い。だれかと共有?
しなくてもいいです、劇場で、満員の皆さんと謎の一体感を味わえただけで満足です。

この映画をすでに観ていた友人と(周りで観た人が誰もいないので唯一共有できる友達です)
、全てのことに共通するよねって話になりました。
何も素晴らしいのは、熱いのは、目に見えるような創作だけじゃない。
彼女は旅行会社に勤めていますが、
1人の旅の為に、裏で何人ものスタッフが動いていることを教えてくれました。
当たり前に感じすぎててわからなかったリアルです。

いつのまにか平らげていたブリトー
いつもならトイレを気にして飲みきれないコーラ、
爆笑と涙で崩れ落ちた化粧、
どれを取ってしても素晴らしい映画でした。
これを成し遂げた全スタッフキャスト、曲げなかった監督!素晴らしいです。